2014年08月19日

ゴーン・ガール

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「ゴーン・ガール」
(上) 978-4-09-408792-5 (下) 978-4-09-408830-4
ギリアン・フリン 小学館文庫 2013年6月

職にあぶれた雑誌ライターのニックは、美しい妻のエイミーを連れ故郷に帰る。希望のない田舎暮らしに、夫婦の仲は徐々に冷えていく。それから2年後の結婚記念日、エイミーが自宅から謎の失踪を遂げた。
現場に残った大量の血痕に、警察は拉致事件と判断。曖昧なアリバイしかないニックに嫌疑がかかる。
妻を失いながら、なぜか悲しみの色が薄いニックの言動に、周囲の疑惑は深まっていくが・・・
倦怠とストレスに満ちた結婚生活を語るニックの独白。
夫の愛を取り戻そうとするエイミーの心中が綴られた日記。
2つの視点で交互に語られる、1組の夫婦の闇。その行きつく果てには、何が待っているのか・・・
予測不能な展開と濃密な心理描写で全米200万部のベストセラーとなった傑作サスペンス。
「セブン」「ファイトクラブ」のデビッド・フィンチャー監督で映画化!(日本公開・2014年11月21日)

帯に海外イヤミスの最高峰と書いてある本書。・・・どれだけイヤな気分にさせられるんでしょう?
調子悪いときに読んだら寝込んでしまいそうですが・・デビッド・フィンチャー監督が映画化と聞いて読んでみました。
舞台は現代、アメリカ中西部の州ミズーリ。子供の頃観た、世界名作劇場の「トムソーヤの冒険」の影響で勝手に牧歌的なイメージを抱いていましたが、本書では、息が詰まるような閉塞感に満ちた土地として描かれています。つい最近も警官による黒人青年射殺事件で暴動が起きてましたし、経済だけでなく色々な問題を抱えていそうな気がします。
そんな煮詰まった土地で、それ以上に煮詰まった1組の夫婦。物語はダンナの言い分・ヨメの言い分を交互に語っていく構成なんですが、ことごとく食い違ってます。表現の違いはあれ、どっちも結局は「うまくいかなくなったのは向こうに責任がある」と言い張ってるんですが・・・
ダンナはヨメのことを愛してない(どころかちょっと憎んですらいる)ので、無理に悲しむ演技をしてボロが出たり、嘘ばかり吐いて周囲にガンガン怪しまれます。怪し過ぎて逆に「絶対コイツは犯人じゃないな」と確信するくらい怪しい。対してヨメは、ダンナへの愛をひたすら日記に綴っていて一見理想的な女性に見えるのですが・・・
ちょっと気味が悪い。
どの辺がというと・・ヨメはクイズを作る仕事をしていて、結婚記念日には必ず宝探しゲームをダンナに仕掛けるんですよ。あちこちに隠されたヒントを順に追っていき、最終的にプレゼントがある場所にたどり着くというものなんですが・・・あちこちと言っても家の中限定とかじゃありません。一緒に行ったカフェとか、公園とか、要するに2人の思い出の場所ばかりなんですが、結構な広い範囲を歩き回らされるわけですが・・隠す方も大変ですよ。そんな労力を使って、ダンナに「思い出を忘れるな」と言わんばかりのゲームを仕掛ける女性って・・ロマンチックを通り越してますよ!それとも海外には結構いるんですかね?こんな人が。
まあ今挙げたような疑問や違和感が読み進むにつれどんどん高まっていき、上巻の衝撃的なラスト1行を経て、
怒涛の下巻に至るわけですが・・・今までの謎のほとんどが下巻開始と同時に解消されます。そこからが凄いというか、
なんというか・・・夫婦間の愛憎とか、もはやそんな話じゃなくなってますよ!
ここからは何を書いてもネタバレになってしまうのでやめますが、面白いことだけは保証できます。
全く別のラストになるという映画も楽しみです。主演2人のキャスティングも絶妙。顎の割れたニックを演じるのは映画監督としても活躍するベン・アフレック。もちろんケツアゴです。エイミー役のロザムンド・パイクもイメージ通り
ですね。
posted by 竹島書店員 at 12:42| Comment(0) | 八潮店 文芸書担当のおすすめ

2014年08月14日

Z〜ゼット〜

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「Z〜ゼット〜」@A巻 相原コージ ニチブンコミックス
「コージ苑」「サルまん」の鬼才・相原コージが描く、恐怖と感動、そして爆笑が止まらない
最新型ゾンビ・パニック・ホラー。
「リング0」の鶴田法男監督によるまさかの実写映画化!

相原コージ先生のホラー漫画、しかもゾンビものということで、期待して読んだ本作ですが・・・
イヤー面白い!「ワールドウォーZ」(映画ではなく、原作小説のほう)の日本バージョンといった趣で、ゾンビ感染に直面する人々の悲喜劇を時系列をシャッフルした連作形式で描いているんですが、1つ1つのエピソードの完成度がむやみに高い!特筆すべきなのは、相原先生ならではというべきか・・大体がシリアスになりがちなこのジャンルに、ゾンビに襲われるという大変な非常事態のまっただなかにもかかわらず、どうしてもエロに気を取られてしまうという男の性というか哀しさ、滑稽さを盛り込んだことですよ!しかも「死ぬ前におっぱい見たい」レベルのことで命を落とすという・・・このことで、作品全体に絶妙な味が生まれています。女性には共感が得られにくいかもしれませんが・・・
第一話は、パンデミックが終息に向かい、社会がある程度秩序を取り戻した「発生後期」の1エピソードから始まります。ひきこもりの青年(名前も古守)が、片思いの相手がゾンビ化したのをいいことに家に連れ帰って監禁するという、言ってるそばから女性読者をフルスロットルで振り落す内容・・
薙刀使い女子高生・戸田凜子と2人の女子中学生の逃避行を描く連作がメインストーリー扱いになっていて、映画版はこのエピソードを軸に構成されているようです。なぜ薙刀なのか?というと、相原版ゾンビの特徴として、頭を破壊しても死なないどころか、細切れにしても各パーツが生きているという前代未聞のしぶとさなので、足を斬って足止めするくらいしか対処しようがないからです。それで距離を取って闘える薙刀が有効と。とにかくゾンビ史上でもかなり上位に来るタチの悪さと言えましょう。そんなゾンビの大群に真っ向から立ち向かう戸田凜子の勇姿・・・なんとしても最後まで生きのびてほしいキャラです。
他にも、3人の仲良し小学生が森の中で半裸の女ゾンビに遭遇するゾンビ版「スタンドバイミー」的エピソードや、倉庫に籠城した5人の男女の間に渦巻く疑心暗鬼を描いた密室劇など、バリエーション豊かな内容が詰まっています。
絵柄のせいも大きい気がしますが、凄惨な地獄絵図を描きながらも、陰湿な感じはあまりしません。ある種の詩情すら漂っているエピソードすらあります。とにかく面白いので、女子にはおすすめしませんが、グロいのでもイケる人は是非お読みください!!
posted by 竹島書店員 at 12:50| Comment(0) | コミック

忘却のレーテ


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「忘却のレーテ」 
法条遥 新潮社 1620円  2014年7月発売
両親を事故で喪ったショックで、「死」に対し異常なまでの拒絶反応を起こすようになった笹木唯は、親の遺した多額の借金を返済するため、大手製薬会社の新薬実験に参加することに。
「レーテ」・・・ギリシャ神話に登場する「忘却の川」から名付けられたその薬には、記憶を完璧に消去する力があった。唯を始めとする6人の被験者は、外部と遮断された施設に幽閉され、前日の記憶をリセットする「レーテ」の投与を受け続ける。7日後には、高額の報酬とともに解放されるはずだったが・・・
毎日毎日、ひとりまた一人と惨殺される被験者、そしてスタッフ。
唯の目前で何度となく繰り広げられる、理不尽きわまりない死。
しかし、その凄惨な記憶も、奔流のような「レーテ」の力によって忘却の彼方に押し流され、何事もなかったように次の1日が始まる・・・
全ての終わりに明かされる「レーテ」開発の真の目的。「忘却」がもたらす福音は、果たして誰を救うのか。

大変後味の悪いミステリを書くことで知られる法条遥の最新作です。今回ものどごし最悪・・・
と言っても、今まで読んだことがあるのは「リライト」と「404 NOT FOUND」だけですが、
どちらも読後非常にドンヨリした気分になる秀作でした。代表作の「バイロケーション」は原作は読んでいませんが映画化されたものを最近DVDで観ました。夫婦愛がフィーチャーされているだけに前述の2作品よりは口当たりがマイルドですが、やっぱりラストは酷いことに・・・
どの作品にも共通しているのは、異常な状況に巻き込まれた主人公が、なんとかしようと必死に頑張るものの、100%裏目に出て事態が余計に悪化、最終的にとんでもなく酷い目にあうという、いっそ爽快なほどに救いのないストーリー展開です。
本書も同じような展開ですが、目の前で惨劇が起きても翌日には忘れてしまうので、主人公が全く事態に対処できないというところがポイント。そもそもこの小説、エピローグから始まるので物語開始時には全てが終わっている・・余計ラストの虚無感が引き立つ構成となっています。ミステリとしての仕掛けの部分は・・・映画好きにとってはあらすじ読んだだけでわかってしまうというか、そうアレですよ!アレ!本当に隠す気があるのか?と疑いたくなるような出来ですが・・・知らない人にはかなりの衝撃かもしれません。他にもいろいろ腑に落ちない箇所が多く、ラストで明かされる真実も相当強引過ぎる感じではありますが・・それはそれ!面白かったから別にいいです!
本書のテーマは「忘却」は救いか否かということじゃないかと思うんですが、難しい問題ですよ・・・「辛い出来事から目を逸らすな」とか「逃げちゃダメだ」という考え方もありますし、実際に深刻なPTSDで苦しんでいる人からすれば、嫌な記憶を消してしまいたいのは当然でしょうし・・・難しい。
いろいろ考えさせられるという意味で、読んで損はない作品だと思います!
posted by 竹島書店員 at 12:42| Comment(0) | 八潮店 文芸書担当のおすすめ