2014年11月20日

全滅領域 サザーン・リーチ@

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「全滅領域 サザーン・リーチ@」ジェフ・ヴァンダミア
早川書房 ハヤカワ文庫NV 978-4-15-041320-0税込886円 2014年10月刊行

見えない境界に囲まれ、異様な生態系と謎の建造物が存在する領域「エリアX」。政府の「監視機構」は、その謎を解明するため何度も調査隊を送り込んできた。しかし、無事に戻ったものはほとんどいなかった。そして今また、4人の女性からなる調査隊が「エリアX」に足を踏み入れる。その中の一人、「生物学者」には他のメンバーも知らないある目的があった・・・パラマウント映画化決定。

タイトルの匂うようなB級感に伸ばしかけた手をいったん引っこめましたが、“解説・柳下毅一郎”に惹かれて手にとりました。イヤー、読んでよかった!本格SFのようでもあり、幻想文学のようでもある、ひとくちにくくれない物語。巻末の解説にあるとおり、ストルガツキー兄弟/タルコフスキーの「ストーカー」を思わせる(というか明らかに意識している)お話です。人知を超えた力が潜む謎の土地という舞台設定や、名前が明かされず職業で呼ばれる登場人物など、共通点多し。異常な生物相の存在や地下に埋め込まれた建造物が出てくるところは、南海の孤島にシロクマがいたり地面に埋まった謎のハッチが登場するTVドラマ「LOST」も影響してるような・・・あと、終盤の展開には、諸星大二郎の某名作が頭に浮かびました。

とにかくすべてが謎。本書の内容はすべて「生物学者」の日誌上の記述という体裁なので、彼女にとって自明なことは説明されません。ですので、どこの国のいつの話かも不明。彼女自身、多くの情報を隠蔽されたうえ、強力な催眠暗示をかけられている状態で、なおかつ個人的な秘密も抱えているという、いわゆる「信頼できない語り手」。また、エリアXを管理しているらしい「監視機構」もとことん謎めいています。シリーズタイトルの「サザーン・リーチ(南の領域)」はこの正体不明の機関の別名らしいのですが、どこに対しての「南」なんでしょうか。調査隊を送り込む目的も、単なる調査ではなさそうです。そもそも監視とは、何の監視を意味するのでしょうか?いやあ、ゾクゾクしますねえ。

物語の進行と合わせるように、徐々に変容していく「生物学者」の心の動きも読みどころです。なぜ、彼女が語り部なのか。その辺にも物語を読み解く手がかりがあるような気がします。
三部作の第一部ということで、物語上の謎は深まる一方でほとんど解かれません。いくつか説明はあるのですが、すべては語り部である「生物学者」の解釈に過ぎないからです。その真実が曖昧な感じもすごくよかったのですが、11月刊行の第二部では、「監視機構」視点の物語が展開するとのこと。物語の全体像が明らかになりそうな気がします。

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カウントダウン・シティ

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「カウントダウン・シティ」ベン・H・ウィンタース
早川書房 978-4-15-001889-4税込1,728円 2014年11月刊行

小惑星の衝突による人類滅亡が迫るなか、真摯に職務を遂行する若き刑事の姿を描いた傑作「地上最後の刑事」、三部作の第二部がついに出ましたよ!
人類滅亡まであと残り七十七日。「宇宙戦艦ヤマト」のナレーションみたいですが本作にはヤマトもブルース・ウィリスも登場しませんので、小惑星を破壊するとか軌道をずらすなんていうダイナミックな展開にはなりません。それどころか、破壊すると無数の破片がより甚大な被害をもたらすというので、小惑星への核攻撃ミッションを実行しようとしたパキスタンをアメリカ・欧州諸国が爆撃して阻止するという・・・皮肉というか、なんというか。前作ではまだ見られた日常の風景も大半が失われ、社会は崩壊の一途を辿っています。
食糧事情は悪化し、配給制に。電気水道もいつ停まるかわからず、ネットやTVはもはや過去の遺物と化しています。警察も機能していないため白昼堂々略奪や殺人が横行。「死ぬまでにやりたいこと」をやるために家族・知人を捨てて出奔する人が続出。直撃予測地点であるインドネシアとその近隣から船で逃げ出してきた難民たちが次々と海岸に押し寄せ、警備隊と小競り合いに・・・等々、凄まじいことになっているのですが、描写がリアルで淡々としているだけに一層恐ろしく感じられます。
そんな末期的状況のなか、主人公の元刑事・パレスは昔なじみの女性から出て行った夫の捜索を依頼されます。どうせあと2か月しか生きられないんだから、本人の好きにさせとけばいいのに!と凡人なら思うところですが真面目なパレス君は引き受けます。そして前作同様、地道な聞き込みを開始するのですが、手がかりは少ないわ、世の中は狂ってきてるわで捜索は困難を極めます。「でも、やるんだよ!(コピーライトマーク根本敬)」と歯を食いしばってがんばるパレス君が辿り着いた衝撃の事実とは・・・

本書では、前作にも登場した実の妹・ニコが物語に大きくかかわってきます。苛酷な幼少時代をともに過ごし、守ってやると誓った最愛の妹は、今や反政府勢力と活動中。この集団、ニューハンプシャー大学を根城にしたヒッピーみたいな連中で、政府による陰謀論を唱え、武装決起を目論んでいます。政府は小惑星を破壊できる方法があるのに、過剰な人口を減らすためわざと衝突させる気でいるというのがその主張。いくらなんでもそりゃないんでは・・と言いたくなりますが、ニコは完全に信じ込んでいて、連れて帰ろうとするパレスを拒絶します。
運命を受け入れ、その上で自分にできることをやり抜こうとするパレスと、運命に抗い、戦うことを選んだニコ。
どちらが正しいわけでも間違っているわけでもないんですが、ただし・・ニコがあまりにもバ・・いや、純真そうに見えるので悲劇の予感がビンビンします。すれ違う兄妹の関係に決着はつくのでしょうか?第三部は妹萌えの人なら必読の内容になるかもしれませんよ!

さて、第三部の舞台は遂に衝突の1週間前(!)。ホントにどうなっちゃうんでしょうか?最後の瞬間は描かれるのでしょうか?パレスはその時何を想うのか。一刻も早く邦訳をお願いします・・・!!
posted by 竹島書店員 at 18:54| Comment(0) | 八潮店 文芸書担当のおすすめ

2014年11月10日

ゴースト・スナイパー

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「ゴースト・スナイパー」ジェフリー・ディーヴァー
文芸春秋 978-4-16-390156-5 税込2,592円 2014年10月刊行

バハマに滞在中の著名な反米活動家モレノが殺害された。彼の命を奪ったのは、2,000メートルの長距離から放たれた1発の弾丸。米国政府の諜報機関による違法な暗殺と判断した検事補ローレルは、指令を出したNIOSの長官・メツガーと実行犯のスナイパーを捕えることを決意。強大な敵に対抗するため、四肢麻痺の科学捜査コンサルタント、リンカーン・ライムと刑事アメリア・サックスに捜査協力を要請する。しかしバハマは遠く、非協力的な態度を取る現地警察からは証拠物件が送られてこない。遅々として進まない捜査に業を煮やしたライムは、現場検証のため、みずから現地に飛ぶ。しかしその間にも隠蔽工作は着々と進み、NYに残って捜査を続けるサックス、そしてバハマのライムにも危険が迫る・・・!
リンカーン・ライムシリーズ第10作。

久々のライムシリーズ新刊ですが、前作「バーニング・ワイヤー」で宿敵との決着がついたせいもあってか、今回は事件のスケールが大きいわりにツイストはおとなしめで、シリーズ中では小粒な作品という印象です。とはいえおもしろさのレベルはいささかも下がってません。分厚い本ですがあっという間に読み終えてしまします。
テロとの戦いにおいて、先制攻撃はどこまで許されるのか。現実とリンクした重たいテーマを扱いながら、ページを繰る手を休ませない一級のエンターテイメントでもある・・・並みの作家ではこうはいきますまい。

さきほどツイストがおとなしめと書きましたが、読者を騙すテクニックにはますます磨きがかかっています。
ディーヴァーといえば、二転三転どころか五転、六転のドンデン返し。読むほうも当然身構えているわけで、ハードルの高さは新作が出るたびに上がっているはずなんですが、本書でも目くらまし、うっちゃり、ミスディレクションの限りを尽し、見事に騙してくれます。

おなじみのライムファミリーも健在で、なかでも今回、ルーキーことロナルド・プラスキーが素晴らしい働きを見せます。下手するとサックスを上回るレベル。殺されかけたせいで一時は警察を辞めようとしたプラスキーが、ここまで成長するとは・・・・シリーズをずっと読んできた人ならグッとくるのではないでしょうか。

解説によれば、アメリカではすでに11作目が刊行されているとのこと。タイトルは・・「skin collector」。
こ・・これは、どう見ても1作目「ボーン・コレクター」にひっかけたタイトルですよね?11作目ということでシリーズの仕切り直しなのかもしれません。だとしたら、大変気合の入った内容であることが予想されます。一刻も早く読みたいので文芸春秋様、可及的速やかに邦訳出してください!よろしくお願いします!

「ボーン・コレクター」で思い出しましたが、1作目以降映像化のニュースがない本シリーズ。叙述トリックを多用するそのスタイルが原因なのか、それとも映画版ボンコレの評価がイマイチだからか・・・上手く撮れば、面白くなると思うんですけど・・・また映画化してほしい・・・というか、スカーレット・ヨハンセンにアメリア・サックスを演ってほしいだけですが!ライム役はロバート・ダウニー・Jrでどうでしょうか?
posted by 竹島書店員 at 21:39| Comment(0) | 八潮店 文芸書担当のおすすめ