2014年12月20日

その女アレックス

sonoonna.jpg

「その女アレックス」ピエール・ルメートル
 文芸春秋 文春文庫  978-4-16-790196-7 税込918円 2014年9月刊行

買い物の帰り道、突如として拉致され、監禁された女性。身動きもままならない狭い檻に閉じ込められ、食物も与えられず、徐々に衰弱してゆく彼女を不気味に凝視する飢えたネズミの群れ。
死を目前にした彼女を支えるのは、たったひとつの想いだけ。
“わたしにはまだやらなければならないことがある”─彼女の名はアレックス。
“このミス、週刊文春、早川書房、IN☆POCKET 1位全制覇。今年最高の話題作!”(本書帯より)

拉致監禁された女性を救え!「特捜部Q 檻の中の女」を彷彿とさせるシチュエーションではじまる本書。ところが!ここから物語は二転三転、そのたびに世界の見え方がガラッと反転するような展開を見せます!これだけ予想を裏切っていく物語もなかなかないですよ!「こうきたら次はこうなるだろう」っていうサスペンスの定型が巧みにずらされる!その結果どうなるか?まず唖然としますよね。その後より強烈なサスペンスが襲ってくるわけですよ!サスペン過ぎ!
内容についてはこれ以上語れないので、登場人物について少し・・・アレックスは別格として、事件を追う捜査陣がいい!145センチの低身長でハゲというロースペックなルックスながら、すこぶる頭が切れるヴェルーヴェン警部、対照的に巨漢で百官デブの上司ル・グエン、若くて金持ちのイケメン刑事というこち亀の中川巡査みたいなルイ、正反対に貧相で超ドケチなアルマンという凸凹コンビ2組。マンガみたいな4人組ですが、こいつらがまたイイ奴らなんですよ!鬼畜のような所業がこれでもかと描かれる物語のなかで、彼らのアツい正義感と人情が暗くなりがちな雰囲気を救ってくれています。

まあこれは言ってもいいと思うんですが、どうあがいてもラストで泣きます。あがくだけ無駄ですよ・・・といっても巷にあふれ返る激安なお涙頂戴ものと一緒にしちゃいけませんよ!この本で泣くのはなんら恥ではない。むしろ泣けなかったら恥じるべき!!あと、最低2回は読んだほうがいいんじゃないですか?真相がわかってから再読すると、一度読んだ場面がまた違った意味合いで見えてきますよ・・・というか、まず一回読んでください!早く!
posted by 竹島書店員 at 15:20| Comment(0) | 八潮店 文芸書担当のおすすめ

監視機構 サザーン・リーチA

kansi.jpg

「監視機構 サザーン・リーチA」ジェフ・ヴァンダミア
早川書房 ハヤカワ文庫NV 978-4-15-041323-1 税込1,188円

映画化も決定、超大型エンタテインメント「サザーン・リーチ」3部作、待望の第2部!
謎の領域「エリアX」を探索する調査隊を襲う未曽有の恐怖を描いた前作。第2部では舞台をエリアXの外縁に位置する“監視機構”の拠点に移して前作の続きが語られます。エリアXに関する調査を一手に担うこの組織、前作では特務機関ネルフかゼーレのような謎めいた存在感を放っていましたが・・・本書で明らかになった実態は、実りのない調査に疲弊し切った窓際組織というなんとも冴えないもの。主人公の管理官、通称“コントロール”は組織の掌握と事態収拾に必死ですが、やたら反抗的な部下や壊れかけた科学者たちを全くコントロールできない有様。ほとんど不条理系コメディのような展開が延々続きますが、その下で異様な空気が重奏低音のように流れていて、デヴィッド・リンチの映画を観ているような気分になります。
そんなドタバタ劇の合い間に不穏な気配が徐々に高まっていきます。終盤、いきなりの衝撃的展開(本当にいきなりでビックリ)ともに世界スケールで勃発する壮大なカタストロフィは見ものです。この展開、第一部から読んできた人なら、ある種の爽快感すら覚えるんじゃないでしょうか。
第三部ではいったいどんな世界が読者を待ち受けているのか。2015年1月発売予定の完結巻が楽しみです!
posted by 竹島書店員 at 15:13| Comment(0) | 八潮店 文芸書担当のおすすめ

ハローサマー、グッドバイ」マイクル・コーニイ

haro-sama-.jpg
「ハローサマー、グッドバイ」マイクル・コーニイ」
 河出書房新社 河出文庫 978-4-309-46308-7 税込918円 2008年7月刊行

戦争の影が忍び寄る小さな港町で、政府高官の息子と宿屋の娘が恋に落ちた。ひと夏を共に過ごし、幼いふたりは愛を誓い合う。すぐそこに破局が待っているとも知らずに・・・。隠蔽された世界の秘密が明かされるとき、夏は終わる。ラスト数ページの驚愕のドンデン返し!SF史上屈指の青春恋愛小説と謳われた名作!

甘酸っぱい恋愛小説であり戦争を描いてもいて、世界の謎を解くミステリでもある。そしてもちろんSFでもあるという、ひとくちではカテゴライズできない作品なのですが、あえて!もろもろバッサリ切り捨てて一言で表現するならば・・・「すごいラノベ」ということになりますか!いや、ラノベをよく知らないで言ってますけども!主人公の少年は年の頃14〜5歳、年相応にガキっぽいわりに自分を一人前だと思っていて、大半の人間を小馬鹿にしているというちょっと嫌なヤツ。・・・そんなヤツがですよ・・・デレデレとツンデレのダブルヒロインに理由もなくモテまくるんですよ!これってラノベじゃないですか?うらやま・・・いや、非常にけしからんですね。「さわやか」と評されることが多い本書ですが、こんなのは断じてさわやかではない!・・・最初読んだとき「ジブリが映画化しそうなストーリーだなあ」と思いましたが、理想化された少年少女ばっかり出てくるジブリ映画にはこの主人公は向いていませんね。いや、これはけなしているわけじゃなくて、思春期にさしかかった男子のいけすかない感じを非常にリアルに表現しているという、褒め言葉です!ジブリのほうがありえない。他にも自己中な人間がいっぱい出てきますが、描き方が非常に上手いですね。
前半のベタ甘恋愛パートと打って変わって、後半は急展開が続き、いくつもの衝撃の事実が明らかになります。このあたりは本当にページをめくるのももどかしいというクリシェがぴったり。牧歌的な描写が多かった分、終盤のシリアスさは余計ズシンときます。そして語り草となったラストのドンデン返しにいたるわけですが・・・これ、一発でスッと納得した人はいるのでしょうか?確かに伏線は細かく張られています。多くの人が気にも止めないようなところに堂々とヒントが出ていて、再読時にビックリしました。しかし一番大きなピースが欠けているので、どうにでも解釈できてしまう気がするんですが・・・答えは読者の受け取りかたしだいということでしょうか。
と書きましたが、実は!本書には続編があります(「パラークシの記憶」河出文庫)本書からだいぶ経ってから発表されたこの続編。これを読むと本書の読後に残るモヤモヤ感がスッキリ解消しますよ!解消というか・・・なんというか・・・個人的には1作目よりはるかに面白かったのですが、1作目を読んで素直に感動した人にはちょっとおすすめできないような・・・なぜかというと、続編自体、本書の豪快なドンデン返しになっているからです。それはもう凄いちゃぶ台返しですよ。SFを読む醍醐味は、まさにこういうところにあるわけですが・・・そういうわけで、本書の読後感を大切にしたい方は続編を読むのはやめたほうがいいかもしれませんよ!
posted by 竹島書店員 at 15:10| Comment(0) | 八潮店 文芸書担当のおすすめ