2015年03月17日

解決まではあと6人 5W1H殺人事件

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「解決まではあと6人 5W1H殺人事件」 岡嶋二人 
 講談社文庫 978-4-06-185713-1  税込637円  1994年7月刊行

タケシマ熱烈おすすめ本『TAKE1(テイクワン)Books』 第一弾!
80年代前半に彗星のごとく登場、「99%の誘拐」「クラインの壺」など数々の傑作を世に送り出したミステリ史に残る最強ユニット・岡嶋二人による、知る人ぞ知る名作です!

「平林貴子」と名乗る謎の女性が、5軒の興信所に持ち込んだ5つの奇妙な依頼・・・
第一章 「WHO?」・・・あるカメラの持ち主は誰?
第二章 「WHERE?」・・・ある喫茶店の場所は?
第三章 「WHY?」・・・ある車の後部シートがなくなった理由は?
第四章 「HOW?」・・・あるテープに隠された情報を取り出す方法は?
第五章 「WHEN?」・・・ある人物が戻るのはいつ?
おたがいの存在を知らない探偵たちがまとめた、単独では意味を成さない調査報告。
しかしその影には、思いもよらない大事件が隠されていた・・・
いったい、何が起きたのか。
最終章「WHAT?」。6人目の“探偵”が真相を解き明かす!

初版本の発表は1985年というからちょうど30年前になるわけですが、時代を感じさせる描写が少なく、文章が簡潔・軽快で読みやすいので古臭さをあまり感じさせません。ただし作中に出てくる若者言葉が、かなり無理してる感があります。当時としてもちょっと現実とずれていたんではないかと。昔はそういう作品が多かったので、そこが逆に時代を感じさせるところではあります。
そんなことはさておいて、おもしろさは保証いたします!
トリッキーな物語設定といい、どんでん返しの果てに訪れる驚愕の真相といい、時代を経てもまったく色褪せないおもしろさです。
この作品を入口に、岡嶋二人の他の作品を網羅するのも良し、ユニット解散後ソロで傑作を連発している井上夢人の作品に手を伸ばすのも良し。充実の読書経験が待っていることでしょう!
posted by 竹島書店員 at 15:34| Comment(0) | 日記

2015年03月10日

アメリカン・スナイパー

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「アメリカン・スナイパー」 クリス・カイル
 早川書房 ハヤカワ文庫NF 978-4-15-050427-4 税込994円  2015年2月刊行

「アメリカン・スナイパー」、略して「アメ砂」!
アメリカの海軍特殊部隊SEALの一員としてイラク戦争に従軍。
160人もの狙撃を成功させ、米軍史上最多記録を打ち立てた凄腕スナイパー“クリス・カイル”。
本書は、味方からは「伝説(ザ・レジェンド)」と称賛され、敵兵からは「悪魔」と恐れられた狙撃手が、自らの生い立ちや戦争や家族について語った自伝です。
クリント・イーストウッドが映画化、2015年1月に公開され賛否両論を巻き起こしたのも記憶に新しいところです。

本書からうかがえるクリスさんの人となりは、いかにもテキサス出身といった感じの陽気で喧嘩っ早い性格。加えて強い愛国心と正義感の持ち主で、父親に「狼から羊を守る番犬のような人間になれ」と教えられて育ちました。
SEALに入隊したクリスさんはスナイパーとして活躍、160人もの敵兵を狙撃。公式なカウントに含まれない狙撃を含めると、実に250人以上を射殺したと言われています。

まるでフィクションのヒーローのようなクリスさん。ページをめくるたび、そんな彼の戦場での華々しい活躍が次々と目に飛び込んでくるのですが・・読み進めるうち、次第にクリスさんの言動に違和感を覚えるようになりました。
勇ましい言葉が並ぶ文章の行間から、狂気がうっすら漂ってくるように思えるのは気のせいでしょうか。
反政府武装勢力、つまり敵兵を「野蛮人」「悪党」と呼び、任務のためなら女性も子供も射殺。
そして「(殺人を)後悔したことは一度もない」「戦争が大好きだ」「悪党を殺すのは楽しい」と取り憑かれたように繰り返すクリスさん。自分自身に必死に言い聞かせるように。
銃を触っていないと血圧や脈拍が異常に上昇し、触ると正常値に戻る。本人も意識しないところで、クリスさんの精神は確実に蝕まれていたのです。
結局PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断され、やむなく除隊。
生きがいを奪われたクリスさんは荒れますが、徐々に家族との関係を修復し、自身のPTSDを克服するためもあったのでしょうか、帰還兵の支援団体を立ち上げます。その後書かれたのが本書で、たちまちベストセラーとなりました。
そして悲劇が起きます。解説によると、発売から1年後、クリスさんはPTSDを患うとされる帰還兵に射殺されたそうです。皮肉にも、犯人はクリスさんが支援していた帰還兵のひとりだったとのこと。

そんな「アメ砂」をイーストウッド監督はどう映画化したのでしょうか。未見なのでよくわかりませんが、公開されるやいなや本国アメリカでは「戦争賛美」「プロパガンダ」映画と批判が相次ぎ、それに対して保守派が猛反発。大変な話題となりました。先日発表された第87回アカデミー賞では惜しくも受賞を逃したものの、おかげで戦争映画としては「プライベートライアン」を超える大ヒットを記録しているとのこと。
右左どちらの意見も「何人もの人を殺した人間を英雄として描いている」という解釈で一致しているようですが、実際は反戦色の強い内容だそうです。
まあ、そもそも「許されざる者」や「グラン・トリノ」といった「贖罪」をテーマにした傑作を撮ったイーストウッド監督が、いまさら人殺しを美化する映画なんて撮らないだろうと思うので、騒いだ人たちは何をどう受け止めたのか興味があるところです。
posted by 竹島書店員 at 18:59| Comment(0) | 日記

2015年03月09日

World 4u 江尻立真

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十条店店長のおすすめコミック

「World 4u_」@ 江尻立真 集英社 ジャンプコミック

「P2!」「パパのいうことを聞きなさい!」「おじゃる丸」などの作品を発表してきた著者による、現代日本を舞台とした都市伝説ホラー。
オリジナル連載作品としては「P2」に続きこれが二作目となる。
王道的な学園卓球漫画であった前作に対し、一話完結形式の都市伝説を語り手の少年が紹介していくという、かなり毛色の異なる作品となっている。

さて「4U」ですが
毎話最初と最後を語り手の少年が締めていくのですが、定番のセリフまわし「みなさん●●」に始まり「当HPの名はー」で締まる様式美が、読むほどに馴染んできます。形式を理解するにつれ「4U」世界にずるずる引き込まれていく感覚といいますか、そういう不思議な読み味があります。

「少年のパート(あいさつ)」〜「都市伝説パート」〜「少年のパート(結論的なもの)」という流れですね。

4Uの魅力は、「本筋である都市伝説パートがなかなかよくできている」というのがまずあります。
時にホラーかつハードな、時に救いのない、時に「あれ?ギャグだった?」みたいな話が展開され、話は二転三転しつつオチへと向かっていく。ラストも一工夫されており、都市伝説を知ってる人はなおさら「こうなるんでしょ」と思わせておいて、そこを裏切ってくるという構成。
短編として、読み物として面白いと思います。ちゃんとシナリオを練っているのが感じられます。

それと、全体を支えるホラー調の演出。これがピリリと利いてます。自分はここを推したい。
異形の存在(のようなもの)が種々挟み込まれますが、これがなかなかサイコでシュールなんですね。
ホラー映画ファンでもある(らしい)著者の本領が垣間見える瞬間で、ハッとさせられます。「ドカーン」と来るのではなく、さりげなく「あれ・・なんか変じゃね・・?」と気づかせる「静」の演出。ドカーン系もたまにありますけど(笑)
この演出は、ジャンプ+連載の方にも受け継がれており、なかなか良いものがいくつかありますので興味ある方はぜひ覗いてみてはいかがでしょうか。ねじれた部屋とか秀逸ですよ。

その一方で、異様にかわいいシーンも多数あり(笑)、最強ジャンプに掲載された下水道の話「ない」や、ジャンプ+の狸の話「ばあ」などは「この路線でもいけるんじゃ?」と思わせられるほどでもあります(笑)
ホラーと言いつつもそれ一辺倒ではなく、ほかの要素も抱える見どころの多い作品ではないかと思います。

・・・という「都市伝説パート」が一つの魅力としてあり、

もう一つに、少年・田島圭吾のキャラクター性があると思います。
案内人とは言いつつも、結局この少年は何物(あるいは「何」)なのか。4Uを作ったのはなぜなのか(ちょっと語られますが)。あるいは、4Uは本当に彼が作ったものなのか。何か秘密があるのではないのかと・・・いろいろ勘ぐりたくなってしまうミステリアスな魅力があり、これが物語を牽引する陰の動力なように感じます。
都市伝説パートが表の魅力だとすると、こちらは裏の魅力。
1話だけ、少年が登場人物として現れる駄菓子屋の回があり、「少年は実在するのか、どうなのか?」のラインを越えてきた回で、かなり異色と言えると思います。プールの話も時系列を感じさせる回になっており、「ちょっと、結局どうなの?」とやきもきします(笑)
次回作があるとすれば田島サイドに踏み込んだ話も読んでみたい気がしますが、その願いは果たされるのかどうか。
・・ここまで書いた時点でジャンプ+最終話まで読みましたが・・なるほど、そうきたか!ネタバレしてしまうのでノーコメントで(笑)

さて今回の単行本は、実は過去の読み切りを集めたものとなっており、実に10年にわたっています。その間に「P2」の連載があり、絵柄やストーリー構成などがめきめきと洗練されていく過程が如実に表れている、著者の成長の生き証人(?)のような単行本となってます。
「あ、これは”パパ聞き”以降かな・・」みたいな目で見ると、また違った楽しみ方も出来るかもしれません(笑)
なお、去年からジャンプ+で連載された新作分(10回で完結しました)については次巻以降のお楽しみとなります。(ジャンプ+で見れますけど)

もうひとつ付け加えますと、話の間に都市伝説の解説文が挟まれており、「小泉八雲ってそうなのか、著者はなかなか博識だなぁ」と思わせられると同時に、知らなくても「へー」と勉強できるので、ちょっとオトクなサービスかと思います(笑)
あと、ビルの看板にスタッフの名前が書きこまれていたり、テレビの中で著者が死んでいたり(笑)と、ところどころさりげなく遊びが入っていたりするので興味のある方は楽しんでみては(笑)。
posted by 竹島書店員 at 10:48| Comment(0) | コミック