2013年11月08日

草加店 店長おすすめ本

shumeihan.png


襲名犯/竹吉優輔 

今年の江戸川乱歩賞の受賞作である。
江戸川乱歩賞は講談社のミステリーの新人作家を発掘するための賞で、過去の受賞者には東野圭吾や池井戸潤などがいる。
つまり、この賞の受賞者は未来の売れっ子推理作家になる可能性があり、要チェックだ。

さて、本作品である。
まず、死刑になって処刑された殺人犯がいる。
これは、連続殺人犯で、最初に殺された2人がパン屋と靴屋だったため、ルイスキャロルの「スナーク狩り」の見立て犯罪とされ、登場人物名の「ブージャム」と呼ばれることになる。
まず、この事件の際、市中は恐怖に包まれるわけだ。

ところが、犯人(男)が捕まると、その美貌と語り口から熱狂的信奉者が多く現れるという事態に。
そして、死刑の処刑後、「ブージャム」の名を名乗る新たな殺人者が現れるのである。
市中は再び、恐怖に包まれる。

第一の事件の際にも関係のあった主人公が、第二の事件では更に渦中に巻き込まれていく。
話は、この主人公の不安定な心情を中心に進んでいくのである。

まあ、他の人の感想を見ると、第二の犯人が殺人に至る動機が弱いとか、色々文句の付け所はあるようだ(苦笑)
でも、みんな言っているように、これは新人の作品だ。
江戸川乱歩賞を受賞できただけの読み所は確かにあるのだ。
東野圭吾だって、新人の頃の作品は、面白いけど最近の作品に比べると物足りない。
主人公の職業:公立図書館の司書の仕事が詳しく書かれており、興味を引かれる。(作者が図書館に勤めているらしい)というのも、読み所だったりする。

江戸川乱歩賞の受賞作は、テレビドラマ化されることも多い。
また、講談社のバックアップで必ず次作が発表されている。
そこから先に進めるかどうかは作者次第だけれど、竹吉優輔が偉大な先輩達のように化けられるかどうか、この作品から読んでいくべきですよ。
posted by 竹島書店員 at 10:01| Comment(0) | 【文芸作品】

2013年09月23日

八潮店 文芸書担当 おすすめ本

blackout.jpg



「ブラックアウト」
続編「オールクリア」全2巻
  コニー・ウィリス 早川書房

2060年のオックスフォード大学史学部では、タイムトラベルで任意の過去に「降下」し、
歴史上の出来事を間近で観察する現地調査が行われていた。
そんな「航時学生」の一員であるポリー、マイク、メロピーの3人はそれぞれ異なった調査のため第二次大戦下の英国に降下する。
順調に進むはずの調査はしかし、タイムトラベルの原則を覆すありえないトラブルの続出で頓挫し、3人は未来に帰る手段すら失ってしまう。
本来なら助けに来るはずの回収チームもなぜか姿を見せない。
理論上不可能なはずの歴史改変が現実となり、未来が変わってしまったのか?
ドイツ軍の爆撃にさらされるロンドンで生き抜きながら、3人は真相を突き止めるべく奔走するのだが・・・

とにかく本が厚い!全3巻ですが通常の文庫本の6冊分はあります。
しかも元々は1冊の本だったのを、さすがに長すぎるからと「ブラックアウト」「オールクリア」の2分冊になったというから恐ろしい。重たすぎて持てませんよ!そんな本。
しかし、いざ読み始めると時間を忘れて読みふけり、最後には読み終わるのが惜しくなってくるほど面白い!!
主人公たちがすれ違いを繰り返して右往左往する展開はコニー・ウィリスのお家芸ですが、
それにしても今作はめまいがするほど引っ張りまわしてくれます。
戦時下のロンドンの風俗を緻密に描いているので、場面によってはダレてくるところもあるのですが、読者のそんな隙を見計らったかのように投下される意外な展開!!
しかも謎はふくらむ一方で、2巻目読み終わる頃には欲求不満で爆発しそうでした。
3巻目に至ってやっと謎解きが始まりますが、それまでの溜まりにたまったストレスを一気に解消するかのように、あらゆる伏線がすごい勢いできっちり回収されていくので爽快きわまりないです。
そしてラストもエンターテイメント大作として文句のつけようのない幕切れ。
本好きなら読んで絶対に損はない、超おすすめの傑作です。
posted by 竹島書店員 at 16:19| Comment(0) | 【文芸作品】

2012年05月21日

「船に乗れ!」  藤谷治  ポプラ社

funeni.jpg

草加店文芸書担当 オススメ本

「船に乗れ!@〜B」  藤谷治  ポプラ社

音楽一家に生まれた僕・津島サトルは、チェロを学び芸高を受験したものの、あえなく失敗。不本意ながらも新生学園大学附属高校音楽科に進むが、そこで、フルート専攻の伊藤慧と友情を育み、ヴァイオリン専攻の南枝里子に恋をする。夏休みのオーケストラ合宿、市民オケのエキストラとしての初舞台、南とピアノの北島先生とのトリオ結成、文化祭、オーケストラ発表会と、一年は慌しく過ぎていく。書き下ろし、純度100パーセント超の青春音楽小説。

全三巻構成の青春音楽小説です。
大人になった主人公が当時を振り返るという形式で、1巻で1年次、2巻で2年次、3巻で3年次の事を語っていきます。
1巻だけでも青春小説としてはよく出来ていると思いますが、この小説のスゴイところは2巻以降。
なにもそこまで・・・というほどの苦難と挫折が主人公を襲います。
普通ならそれを乗り越えハッピーエンドというのが青春小説の王道ですが、本作ではその限りではありません。
スポーツや芸術で成功できるのは限られた人だけ、恋は成就するとは限らない、という現実を突き付けられた主人公の心情描写が巧みで2,3巻はまとめて一晩で読んでしまうほど引き込まれてしまいました。

3巻構成で文量がありますし、2巻の喪失、悲壮感がすごいので読む人を選ぶかもしれません。
しかし、響く人には衝撃を与える作品です。


posted by 竹島書店員 at 10:31| Comment(0) | 【文芸作品】